大江戸温泉物語と湯快リゾートがついにブランド統合
『お湯合わせの儀』記者発表に見る国内旅行需要を温め価格を守ることへの本気度
記事:盛島さつき
旅行業界注目の日本最大規模の温泉旅館ブランド誕生の背景と、今後の展開について両社長に伺った(2024.11.14 更新)
2024年10月25日、時事通信ホール(東京都中央区)にて執り行われた、大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社及び子会社(以下、大江戸温泉物語)と湯快リゾート株式会社(以下、湯快リゾート)のブランド統合記者発表について、両社代表取締役社長(大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社 橋本啓太氏および、湯快リゾート株式会社 西谷浩司氏)へのTABITO個別質問内容を下記に掲載。(インタビュー内容は10月25日の個別質問時のもの)
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西谷氏 湯快リゾート株式会社代表取締役社長 西谷浩司氏
橋本氏 大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社代表取締役社長 橋本啓太氏
盛島:橋本社長、西谷社長、この度はブランド統合おめでとうございます。また個別取材にお時間を取ってくださり、誠にありがとうございます。
橋本氏:はい、昨年も取材くださいましたよね。あれは確か日光でしたね、TAOYAの。
盛島:そうです。TAOYA日光霧降で内覧会と橋本様へのインタビューでお世話になりました。あの記事は公開と同時に大きな反響をいただき、おかげさまでロングヒットしています。特に大江戸温泉物語と湯快リゾートの経営統合発表がなされた4月以降は、その後の展開に注目が集まっているのが多いに読み取れました。TABITOとしても本日のインタビュー機会を待ちわびておりました。
橋本氏:そうですか。ありがとうございます。
盛島:今回は、両社長からお話を伺えるとのことで大変ありがたいです。早速伺わせていただきます。
旅行業界内でも今回のブランド統合が『インバンドへの対応強化』であるという認識が強かったと思うのですが、どうやらふたを開けてみれば、真逆の理由だったようですね。
橋本氏:そうなんです。実際のところ、『国内旅行の冷え込み』というのが、大江戸温泉物語としても懸念している点でした。これまでの当社のスタンス、方針を変えずに、国内旅行を活性化する。そのためには、今後も宿泊の『価格を上げない』努力をしていかなければなりません。インバウンドへの対応となると、もちろん宿泊料はインバウンド価格となり、跳ね上がりますよね。それでは日本人の国内旅行はますます出にくいものになり、大江戸温泉物語の使命を果たせなくなると考えました。これまで我々どもをごひいきにしてくださった大切なお客様へ報いるためにも、価格を上げない努力をしていくことが大切だという結論に至ったわけです。
盛島:そうだったんですね。周囲の予想とは真逆の発想で進めてこられたわけですが、あくまで大江戸温泉物語としては、使命を全うするため方針を変えずに突き進んでこられた、ということですね。今回のブランド統合を決めた背景について、西谷社長もお考えは同じということでしょうか?
西谷氏:そうです。今回のブランド統合を決めえた背景には、近年にみる国内旅行の冷え込みがあります。人々が旅行から遠ざかっている、そういう時流を何とかしたい、ということが強くありました。
関東と関西とでそれぞれがシェアするエリアが違いますが、大江戸温泉物語と湯快リゾートには、様々な点で重なる要素が多くありました。「宿泊料を安めの設定にして、多くの人に気軽に温泉を楽しんでもらう。」日本人が長年培ってきた温泉文化をどうしても守りたい。湯快リゾートが持つその思いと合致したのが、大江戸温泉物語でした。
この2社がブランド統合し全国展開していけば、必ず国内旅行はもっと盛り上がると思いました。そのためには、これまで以上に、様々な点に努力が必要です。仕入れもそうですが、お客様にご満足いただけるよう、食事内容をより充実していく。例えば地域の特色を出したご当地メニューに力を入れていくこともその1つです。
盛島:大江戸温泉物語のブランド名を導入した点についてはいかがでしょうか?
西谷氏:これは『大江戸温泉物語』という名前が全国レベルでより多くの人に知られているということで決まりました。
盛島:橋本社長にお伺いします。前回のインタビューでも伺いましたが、例えば大江戸温泉物語の宿泊プランの中心は、1泊ないし2泊のあくまで短期宿泊だったと思います。この点についても変更はないのでしょうか?
橋本氏:プランについて様々なバリエーションを増やしていくことももちろん今後重要になってくるとは思います。ですが宿泊日数を増やすということは、お客様にとってゆったりとおくつろぎいただくことにはなりますが、同時に宿泊料が上がってしまうという面も出てきます。宿泊日数は1泊でも2日目の滞在をゆっくりしていただくなど、あくまで価格面を抑えてくつろいでいただく工夫をしています。
盛島:料金据え置きでくつろいでいただけるサービスの提供に努めていくという方針なんですね。
ところで大江戸温泉物語、湯快リゾートといえばカジュアル温泉宿の東西横綱と呼ぶにふさわしい、温泉を通じたくつろぎや癒し、心身の健康を提供している場所だと思います。まさに日本人にとってこの上ない幸せを感じる場所ですよね。
TABITOでは今、サスティナビリティの視点に加え、『ウェルネス』という点にも注目して、観光や暮らしの話題をお届けしています。
今後各施設で提供されるウェルネスに関するイベントなどに、力を入れていく方針はございますか?
橋本氏:もちろん、各施設が様々なサービスをすでに提供しているというのはあります。ですが、イベントというより、温泉を通じてご提供させていただいている当社の宿泊プラン、サービスそのものが、まさに『ウェルネス』にあたるのかなと感じます。
盛島:ありがとうございます。確かにそうですね。それでは、両社長それぞれにお伺いします。
まずは、西谷社長からお願いいたします。『大江戸温泉物語』にある、湯快リゾートとは異なる点、いい点について、教えてください。
西谷氏:大江戸温泉物語の徹底したマーケティング力、効率的なサービスの提供は素晴らしいですね。それは豊富なメニューにも表れています。全国展開において重要になってくる点だと思いました。
盛島:橋本社長はいかがでしょうか。湯快リゾートの良い点。大江戸温泉物語とは異なる点について。
橋本社長:湯快リゾートは、取捨選択がとても明確です。力を入れるべきところ、そうでないところのメリハリが、大江戸温泉物語にはない徹底さがあります。
この点は、大江戸温泉物語がアバウトになっていたところでもあるので、流れを変えるうえでもとても参考になります。
盛島:管理システムなどはどうされるのでしょうか?どちらか一方のシステムに統一するのか。それとも新しいシステムを導入するのでしょうか?
西谷氏:システムというのは、実にたくさんのものがあるので、それこそ昨日会議で話し合ったところです。これもまた、両社のいいもの、より合理的なシステムを取り入れて進めていこうとしています。
盛島:お二人のお話を伺っていると、しみじみ、なるべくして今回のブランド統合につながったと感じます。本日の記者発表を、水合わせの儀にかけて『お湯合わせの儀』として執り行われました。経営統合が決まってから今に至るまで、ブランド統合への道は盤石に進められてこられたようですね。
橋本氏:まさにその通りだと思っています。これだけ様々な点において、考えが合致している企業がブランド統合したわけですから、両社ゆるぎないものがあったと思います。
西谷氏:まだお伝えしていないだけで、これから続々と新しい施設が発表されます。リーズナブルな価格で、何度でも楽しんでいただき、よりよいサービスのご提供に努めるという方針は、ブランド統合後も変わりません。どうぞ今後の展開にご期待ください。
(2024.10.25 記者発表 個別インタビューにて)
2024年10月25日、時事通信ホール(東京都中央区)にて、大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社及び子会社(以下、大江戸温泉物語)と湯快リゾート株式会社(以下、湯快リゾート)のブランド統合記者発表が執り行われた。
結婚式風に見立てた記者発表は、水合わせの儀ならぬ『お湯合わせの儀』と銘打ち、終始和やかに進行した。
フォトセッションでは、両代表取締役社長(湯快リゾートの西谷浩司氏と大江戸温泉物語の橋本啓太氏)が腕を組んでステージを退場するなど、演出もさることながら記者への質疑応答といい、両氏の息もぴったりだ。
ー使命は、国内旅行需要を温め、価格を守ることー
『旅行文化』の希薄化への懸念がブランド統合の背景に。
TABITOの個別質問でも詳しく紹介したいと思うが、両社長は(湯快リゾートの西谷氏と大江戸温泉物語の橋本氏)ともにこのブランド統合の背景にある『旅行文化』の希薄化への懸念から『国内需要を温める』こと、そのうえで価格を守ることについて強調した。
興味深いのは、ブランド統合が発表されて以来、両社の統合が『インバウンドへの対応強化』と認識されがちだったが、ふたを開けてみれば、そんな話題はどこ吹く風であること。
記者への質疑応答の多くにあった『インバウンドへの強化』についてはまるでおまけの話題のように、「インバウンドのニーズについてももちろんあるので、それにも徐々に対応する」にとどまり、両氏が協調するのは、あくまで日本人向けの国内旅行の活性化であった。
インバウンド需要の熱気にあおられるわけでもなく、国内旅行を守り抜く姿勢と強気の発言は、何より徹底したコスト管理やマーケティング力など、東西のカジュアル温泉宿の横綱の裏付けある実績によるものだ。
その他、ご当地メニューの強化や、さらに精度を上げて臨むというコスト管理についてなど、今回のブランド統合がもたらす、名実ともに国内最大規模のカジュアル温泉ブランド誕生によるシェア拡大で実現できる恩恵について語られた。
今後のブランド展開については、スタンダードな価格帯の『大江戸温泉物語』と、その上の価格帯に当たる『大江戸温泉物語プレミアム』、そして『大江戸温泉物語わんわんリゾート』の3シリーズからなる『大江戸温泉物語ブランド』と、ラグジュアリーなクラスの『TAOYAブランド』の2ブランドという形で展開する。
《大江戸温泉物語・湯快リゾート ブランド統合についての補足》
経営統合の時系列
2022年2月 ローン・スター・ファンドが大江戸温泉物語ホテル&リゾーツ(株)の全株式を取得
2023年1月 ローン・スター・ファンドが湯快リゾート(株)に出資
2023年2月 大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ(株)・湯快リゾート(株)両者の統合委員会を設置
2023年8月 GENSEN HOLDINGS(株)設立
2024年4月 GENSEN HOLDINGS(株)が大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ(株)・湯快リゾート(株)の経営指導開始
2024年11月1日 両者が運営する宿・温泉施設のブランド名を統合
2025年秋ごろ 大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ(株)・湯快リゾート(株)の経営統合(予定)
温泉宿の横綱である2社が展開する全66施設が【大江戸温泉物語グループ】として 2024年11月1日に統合ブランドとしてスタートし、名実ともに全国最大の「カジュアル温泉宿ブランド」が誕生することになる。
※個別取材内容を、改めて両社代表取締役社長インタビュー記事として後日公開予定
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