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ー 父から受け継いだセールナンバーJP171の翼で浜名湖から世界に羽ばたく ー 17歳のプロウィンドサーファー守屋拓海さんインタビュー

浜名湖からワールドチャンピオンを目指す
17歳のプロウィンドサーファー守屋拓海さんインタビュー

 

U-20で世界ランク1位の若きトップアスリートが見据える世界の頂点

桜の開花にはまだ少し時間が要る3月の下旬。晴れ渡る空の下、降り注ぐ陽光が湖面を反射しキラキラと輝く、浜名湖のほとり、静岡県浜松市村櫛町。湖から時々吹き抜ける風が心地よく、辺り一面、南国のような眩さに溢れていました。

どこまでも続く遠浅と、海水の入り込む汽水の湖であることが特徴の浜名湖は、多様な海洋生物が生息し、漁場としても有名です。夏場ともなれば、海水浴場として賑わう他、湖以外にも周辺の山など、豊かな自然環境や観光施設が揃う、風光明媚な地域です。
浜名湖の西に位置する、湖西連峰は、標高400メートル前後の山が連なり、初心者でも楽しめるハイキングコースがあります。そこから浜名湖全体を一望することもできるそうです。
また北側に延びる国道362号線沿いには、舘山寺町の『はままつフラワーパーク』、南に位置するここ村櫛町には、『浜名湖ガーデンパーク』があり、その2施設を拠点に、『浜名湖花博2024』が開催され、全国から多くの観光客が訪れています。(2024616日まで浜名湖花博2024開催※浜名湖ガーデンパークは、62日まで)
その『浜名湖ガーデンパーク』にほど近い村櫛町の先端に、ウィンドサーフィンのメッカとして週末ともなれば、多くのウィンドサーファーが集まる場所があります。
今回の目的地、プロサーフショップ『WINDS171』(ウィンズイチナナイチ)。
U-20の部門で世界ランク1位に輝く若きトップアスリート、守屋拓海さんのインタビューで、この地を訪れたのでした。

約束の時間が来るまで、記事の挿絵用の写真を撮ろうと、「WINDS171」の周囲を歩いていると、水筒を片手に、軽やかに走る少年が視界に飛び込んできました。

少年は、私に気づくと足を止め「あ、こんにちは。インタビューですよね。よろしくお願い致します。」と、屈託のない、明るい笑顔で声をかけてくれました。
フリースタイルのプロウィンドサーファー守屋拓海さんです。
想像した通り、なんとも自然体で、朗らかな印象の少年でした。
拓海さんのご両親が運営する、『WINDS171』の2階店舗に案内してもらい、さっそくインタビューを開始しました。

記事:盛島さつき


インタビュー表記 Q.・・・盛島 /  太文字・・・守屋拓海さん

ー初めは水が怖かった。しぶしぶ始めたウィンドサーフィン。すぐに辞めるつもりが、気づいたら夢中になって、そして大きな目標に繋がったー

 

Q.まずは、ウィンドサーフィンを始められた時期について、教えてください。

ウィンドサーフィンを始めたのは、小学1年生の時です。でも最初は怖かったです。泳げなかったから。だからウィンドサーフィンをやるのに、僕の場合、スイミングスクールに通うことから始まりました。両親がウィンドサーフィンの経験者だったので、最初は親に進められて、しぶしぶやった感じです。すぐ辞めるつもりでした。

Q.それが、辞めるどころか、数々の大会で優勝するようにもなったんですよね。ウィンドサーフィンに対して、何か変化があったのですか?

風に乗ってスピードが出せるようになってから、だんだんウィンドサーフィンを楽しいと感じるようになりました。ウィンドサーフィンを好きになっていくと、そのうち大会でも結果が出せるようになって。
もっと上手くなりたい、もっと上手くなりたい。そんな気持ちが強くなって、気づいたら、U20の年間ランキングのチャンピオンという目標にも到達していました。
風に乗ってスピードが出せるようになって、ウィンドサーフィンの楽しさを知ったのが、とても大きなことだったと思います。

 

Q.そうだったんですね。泳げないと海や水が怖いと感じてしまいますよね。それが風に乗る楽しさを知って、ウィンドサーフィンの魅力にはまっていったんですね。

そうだと思います。ウィンドサーフィンは風さえあれば、進みます。
だからサーファーは、風のあるところを探して、そこに向かっていきます。
ある程度風のある日だと、アマチュアの人でも結構スピードが出せるんですよ。時速60キロぐらい出すことも出来ます。風の力だけで、かなりのスピードを出すことができる。それがウィンドサーフィンの面白いところだと思います。

 

Q.時速60キロですか?!車道で車走らせるのと同じくらいのスピードですね。私は、車で時速60キロ出すのも怖いですけど(笑)

そうですね。時速60キロのスピードは、かなりの速さだと思います。僕の場合は、時速45キロぐらいの速さで、プレーニングをします。45キロ以上出すと、今の僕の身体ではまだついていけないので。

Q.時速45キロも相当なスピードだと思います。ところで、プレーニングとはなんでしょうか?

プレーニングとは滑走状態のことで、時速約15km以上出ていることを言います。ジャンプしたり、回転したり、技を繰り出すためには、まず滑走スピードも重要になります。僕の場合だと、さらにトレーニングを積んで身体を作って、時速55kmくらいまで出せるようになるといいなと思っています。

Q.拓海さんが競技される種目は、主にフリースタイルと伺っていますが、、フリースタイルとはどんな種目でしょうか。ウィンドサーフィンにもいくつか種類があるようですが、教えてもらえますか?

ウィンドサーフィンは、大きく分けて、スラロームやFOiL(フォイル)と呼ばれるレースでスピードを競うものと、WAVEやフリースタイルという、波に乗ったり、海面を滑走しながら、繰り出す「技」の完成度、技術を競うものがあります。
僕が出場するフリースタイルは、他のスポーツでいうと、フィギアスケートがイメージに近いかもしれません。

 

Q.フリースタイルの「技」について、教えてください。拓海さんは幾つくらいの「技」を習得されましたか?

僕は40種類くらいできます。まだ習得していない技や、これから挑戦したい技もたくさんあります。

 

新たなステージに向けて、挑戦はすでに始まっている。
すべてをウィンドサーフィンに注いで

 

新しい技の習得もそうですが、プロメンズのクラスで戦っていく上では、僕は身体が大きい方ではないので、トレーニングで筋肉をつけたり、今は、週に1回習っているトランポリンを取り入れてジャンプする感覚など養っています。

Q.トランポリンですか。

はい。ウィンドサーフィンを行う上で、かなり役立っていると感じています。ジャンプする感覚や技の幅が拡がったと思います。

Q.ウィンドサーフィンのフリースタイルやWAVEをされる方は、トランポリンを取り入れることは主流なんでしょうか?

いいえ、そんなことないです。ウィンドサーフィンの技術を上げていく上で、何か新たなトレーニングを取り入れられないか探していた時に、たまたま両親がトランポリンを見つけてくれました。
それで始めたんですが、掛川まで行かないとできないので、片道1時間半くらいかけて電車で通っています。

 

Q.拓海さんは、このインタビューでも感じますが、とても落ち着いて、朗らかですよね。出場する大会でも、同じように落ち着いて冷静に技を決めていく感じですか?

そうですね。あまりヒートアップしたりしない方だと思います。気持ちのアップダウンはあんまりなくて、どちらかというと、冷静に分析して、次につなげていくのが得意です。

Q.それは持って生まれたご自身の性格から来ているのでしょうか?

そうだと思います。ウィンドサーフィン以外の普段の生活も、結構そんな感じだと思います。(笑)

Q.大会に出場となると、数日間にわたって競うようですが、戦略など練ったりするんですか?

拓海さん:僕は華やかな大技を決めたり、力業で得点をたたき出すというよりは、11つ正確に技を刻んでポイントを積んでいくタイプかもしれません。

. 大会中、ご家族で話し合って戦略を練って優位に進めていく。そんなこともありますか?

いえ、基本的に僕一人で大会に出ているので次はこの技を入れよう、とか一人で考えて実行する感じです。大会中、両親はもちろん、誰かコーチがいるわけではありません。
あと戦略を練るといよりは、状況に応じて、臨機応変に技に臨む、という感じです。

Q. それは意外でした。ウィンドサーフィンは、機材も大がかりなので、大会に出るのも、ご両親のサポートなしでは、なかなか難しいだろうと思うのですが。

両親がついて来てくれたのは、13歳のヨーロッパ遠征が最後で、その後は、コロナ禍に入り、2年間は大会がほとんどありませんでした。国内外の大会がまた開催されるようになって、それからは僕一人で大会に出ています。と言っても年上のウィンドサーフィン仲間の人の車に同乗させてもらって、会場に入っている感じです。

Q. そうだったんですね。毎年全国各地の大会に出場されていると思いますが、会場では、小さいころから知っている、ウィンドサーフィン仲間に会える場所でもあるのでしょうか。

はい。大会は、仲間たちに会える場所でもあります。もちろん、競技をする上ではライバルですが、みんな仲がいいです。

Q. ウィンドサーフィンをされる方って、とっても大らかな雰囲気ですよね。あまり細かいこと言わないというか。

そうだと思います。細かいこと誰も気にしない。ウィンドサーフィン未経験の人が入っても、遠慮しないで大丈夫な人たちだと思う。それもウィンドサーフィンのいいところかもしれないです。


海外遠征で起きたハプニング。仲間の機材で臨んだ大舞台

Q.さて、海外での大会について、伺いたいと思います。これまで遠征先で何かトラブルなどはなかったですか?

2023年の6月に、イタリアで行われた世界大会(FPT VIESTE)で空港に荷物が届かないというハプニングを経験しました。結局届かないまま、同じタイプの機材を持っている仲間のものを借りて大会に臨みました。

Q.それは大変な事態に見舞われましたね。空港で待っている間、どうでしたか?さすがに冷静じゃいられないですよね。

はい、めちゃくちゃ焦りました。(笑)来ないよ、どうしようって、思いました。

Q.ですよね。すごい経験しましたね。逆にもう怖いものないですね。次の大会にそのまま乗り入れたようですが、機材は届かないままだったのでしょうか?

次のスペインでの大会(Fuerteventura PWA Grand Slam)には間に合って、自分の機材で臨むことができました。

Q.それは良かったですね。ちなみに国際大会含め、昨年の主だった成績はいかがでしたか?

プロメンズクラスで、スペインの大会で17位、ドイツの大会では9位に入りました。年間ランキングは、U-20においてワールドチャンピオン、プロメンズクラスで、世界14位に入りました。

※なお拓海さんの2023年海外遠征以降の成績は以下の通りです。

■2023年7月 PWA GRANCANARIA world cup wave U-20 7位
■2023年8月 PWA FUERTEVENTURA world cup freestyle 17位
■2023年8月 PWA Sylt world cup freestyle 9位
■2023年PWA Youth Freestyle World Champion
■2023年PWA Freestyle 年間ランキング14位
■2023年11月【高2】JWA三浦フリースタイル選手権 プロクラス1位
■2023年12月【高2】 浜名湖TUKASA JAPANCUP プロクラス1位
■2023年プロ年間ランキング1位獲得(国内)

Q.素晴らしい結果ですね。そんなトラブルも経験しながら国際大会のツアーで、結果的にプロメンズのクラス9位に入るとはすごいです。ところで一つ教えてください。拓海さんはまだ17歳だから、U-20のクラスで成績が出るのではないですか?

大会のルール上、20歳以下 のクラスで1回優勝してしまうと、U-20のクラスに参戦できなくなるという決まりがあります。

Q.そうだったんですね。17歳というと、いずれ訪れるプロメンズクラスへレベルをシフトしているところで、そのためのトレーニングなど徐々に始められているころかな、と想像していましたが、もうすでに大人たちの世界で戦っていたんですね。プロメンズクラスでの目標はありますか?

2024年は、まず年間のワールドランキング10位以内に入りたいと思っています。そして将来は、ワールドチャンピオンを獲得したいと思います。


父から受け継いだセールナンバーJP171の翼で世界に羽ばたく

Q.JP171という番号について教えてください、お店の名前にも171と入っていますね。この番号にはどんな意味があるのでしょうか?

JWA(日本ウィンドサーフィン協会)登録のセールナンバーで、JP171は、父から受け継いだナンバーです。父はもともと実業団のレースの選手でした。※1

 

Q.そうだったんですね。実業団の選手だったとは驚きです。

 

※1・・・守屋拓海さんのお父様(守屋賢二さん)は、かつて実業団(JR東海所属)に約20年所属し、全日本選手権優勝回数6回、250戦出場中約200回の入賞実績を持つ、ウィンドサーフィン界の実力者でした。引退後、ウィンドサーフィンショップWINDS171を本格的に開始し、現在ショップ運営や後進育成に従事されています。

 


多くの人に、ウィンドサーフィンの魅力を知ってもらいたい。テニスをするように、気軽に始めてもらいたい

Q.さて、TABITO Japanでは、旅先でその地域ならではの体験ができることなどをご紹介しています。
例えば浜名湖だったら、あまたアクティビティあれど、今回おススメしたいのでは、もちろん、ウィンドサーフィンです。旅先で気軽にウィンドサーフィンが体験出来たら、素敵だろうな、と思います。
特に今回の拓海さんのインタビュー記事を読んでくださった方が、「自分も気持ちよく風に乗って、ウィンドサーフィンが出来たらいいな。」と思ってくださったら、とても嬉しいですよね。
実際には、どうでしょうか。旅先で気軽にウィンドサーフィンを体験するなんて、、、、。難しいことですか?!

 

全然そんなことないです。実際に、そういう人は沢山います。
ウィンドサーフィンは、日本全国の多くの海岸で親しまれています。海だけじゃなく、浜名湖同様、本栖湖も、ウィンドサーフィンの大会なども行われている場所です。
ここ浜名湖でウィンドサーフィンをするメリットは、遠浅の湖なので、風に乗って、ウィンドサーフィンでどこまで進んだとしても、湖の底に足がつくので、初心者の人が安心してウィンドサーフィンを体験することが出来ます。水や海が苦手な人でも大丈夫です。
ウィンドサーフィンは限られた環境の人だけが楽しめるスポーツではなくて、誰でも体験コースなどを通じてスタートすることが出来ます。うちのお店(「WINDS171」)にも、「WIND VILLAGE」というスクールがあって、初心者の人でも安心してできる、体験コースなど、いろいろコースが揃っています。
僕も夏休みには、小学生にウィンドサーフィンを教えたりしています。

多くの人に、ウィンドサーフィンの魅力を知ってもらえたら嬉しいです。

そして、テニスをするように、気軽に始めてもらえたらいいな、と思います。


守屋拓海(もりやたくみ)さん プロフィール

生年月日:2006 年 8 月 27 日
出身地 :静岡県浜松市
所属 :キャタラー(CATALER) https://www.cataler.co.jp/

©キャタラー(CATALER)

6 歳でウインドサーフィンをはじめ、現在、高校3年生17 歳。(2024年5月現在)
2019 年 JWA(ウインドサーフィンのプロが競う日本最 高峰のツアー戦)ウインドサーフィン・フリースタイルツア ーのスペシャルクラス3連覇を果たしプロ資格を取得。現在 最年少プロウインドサーファーとして活動開始。同年 8 月、 スペイン(フェルテベンチュラ)で開催された PWA(ウイン ドサーフィンの世界最高峰の大会)ウインドサーフィン・フ リースタイル選手権に出場し、U15 クラス優勝。2021 年 JWA プロ年間ランキング 1 位を獲得。2023年ウインドサーフィンを多くの人に知ってもらうこ とが最終目標。(ホームゲレンデ:浜名湖 村櫛海岸)

 

WINDS171 情報

〒431-1207 静岡県浜松市西区村櫛町5747-1
TEL:053-489-2300
HP:http://www.winds171.net/index.html

 

ウィンドサーフィンスクール情報(WINDS171内)

WIND VILLAGE (ウインドビレッジ)
〒431-1207 静岡県浜松市西区村櫛町5747-1
MAIL: windvillage1@gmail.com
TEL :​ 080-7530-7477 (直ぐに応答出来ない場合がございます)
https://tarouw171.wixsite.com/windvillage

 

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