エシカル・サスティナブルひと・くらし最新記事白馬村周辺

スマートシティ先進国シンガポール発のスタートアップ企業、SWAT Mobilityが導くシームレスな移動の未来 

当記事は、白馬村のナイトデマンドタクシー実用化についての続編です。
TABITOでは、特集を組んで、白馬村のインバウンド観光や四季折々の魅力を、1年を通じ様々な角度からご紹介しています。

関連記事 https://tabitojapan.com/hakuba1-maas/

近日公開関連記事
■ 白馬岩岳マウンテンリゾート グリーンシーズン情報
■ LAND STATION HAKUBA – スノーピーク * Snow Peak 施設紹介
■ 青鬼村 雪景色から春の棚田へ story1

 


スマートシティ先進国シンガポール発のスタートアップ企業、SWAT Mobilityが導くシームレスな移動の未来

高度なテクノロジーを積極的に導入し、IoTを活用した交通、エネルギー、廃棄物管理のリアルタイムのデータ収集や分析、都市の運営の最適化など、様々な分野でスマートシティ先進国として知られるシンガポール。
「市民はスムーズな行政手続きが行え、効率的なサービスを受けられる」、というように、政府主導でデジタル化が促進されています
さらにシンガポールといえば、デジタルツイン(※)の分野においても、いち早く乗り出し、数々の取り組みで成果を上げているのはご存知でしょうか。シンガポールは、建物や公共スペースの設計を含め、持続可能性や利便性を重視しながら、多角的・戦略的に都市計画を展開し、市民の生活をより快適にする指針を実行しています。
このような押しも押されぬスマートシティ先進国として世界から認知されるシンガポールから、MaaS技術でビジネス展開し2020年より、日本で本格的な事業をスタートした企業があります。

その企業は、アジア圏を中心に世界7か国で事業を展開するSWAT Mobility Inc.です。
2016年のシンガポールでの設立ののち、2020年に本格的に日本に参入、着実に日本の交通インフラ改善に貢献し、実績を上げているスタートアップ企業です。
北九州市での実証実験での参画により、自治体を中心に日本が進める地方都市のDX推進や、都市や地域ごとに生じる課題解決に、SWAT Mobility Japanへの期待が高まっています。

SWAT Mobility Japanの将来性は、そのMaaS技術を用いて、交通インフラの改善スマートシティをはじめとした都市計画分野において実績を積み上げています。都市部での交通渋滞や効率的な移動手段の確保がますます重要視される中、SWAT Mobility Japanの技術サービスの独自性はどのような点にあるのでしょうか。

2023年12月19日 ナイトデマンドタクシー出発式の模様   テープカット向かって右から2番目の男性が、SWAT Mobility Japan代表取締役の末廣将志社長

 

日本法人 代表取締役 末廣将志社長

末廣将志社長 プロフィール

新卒で総合商社に入社し、中東での発電所・変電所のインフラ開発、自動車メーカー向けの製造機械の営業に従事。欧州でMBAを取得後、グローバルコンサルティングファームのシンガポール法人に入社し、戦略策定やPMIに従事。2019年にシンガポールのモビリティスタートアップであるSWAT Mobilityに入社し、日本法人の責任者に就任。

人口1万人弱の山間部に位置する白馬村のインバウンド需要に対応するため導入された、MaaSアプリ 「HAKUBA DO」

「この村に、こんな便利なアプリが導入されたこともそうですが、まずその使いやすさに驚きました。やっぱり使いやすいかどうかは村民も使うことを考えると重要な点です。」
取材を進めるため、タクシーを利用しながら白馬村を回った際に、目的地へ向かう中で、タクシードライバーの方が、何気ない会話の中から、たまたま白馬村のナイトデマンドタクシーが導入されたことやアプリについて伺うことができました。
まさに、使いやすさは、重要な点です。

ちなみに、宿泊施設のフロントでも、アプリの利用については、ナイトデマンドタクシーの予約はもちろん、加盟店のレストラン予約もアプリから行うことが出来ることを説明いただきました。
実用化が始まったばかりのタイミングでも、白馬村の、特に飲食店や観光事業者の多くの従業員が、アプリについて理解しているようです。

アプリを利用する人にとっては、初めての機会がスムーズにいかないと、なかなか継続的な利用には繋がりません。結果、MaaSアプリを導入した地域での普及に至らず、目的を十分果たせない結果にもなりかねません。
その点において、白馬村のナイトデマンドタクシーは心配はなさそうです。
実証実験の段階から、12000人におよぶ利用者の実績を出しただけあり、ナイトデマンドタクシーの導入や、アプリ利用の普及について周知できたこと。さらにその間に、改良や実用化に向けた準備を進められたことも、産官学民の共同事業としての成功事例と言っていいのではないでしょうか。

今回は、そんな白馬村のナイトデマンドタクシー実用化とアプリの普及を、MaaSアプリという技術面で下支えし、インバウンド観光と地元住民の暮らしの「足」として、白馬村の新たな移動に道筋を作ったSWAT MObility Japanのご紹介をさせていただきます。


Empowering the world to move more with less
~より少ない資源でより多くの移動を~
SWAT Mobility

TABITO Japanでは、観光MaaSに関する技術的な進展と日本全国の普及について進捗の情報を独自にリサーチしまとめています。以下は、2023年12月16日のナイトデマンドタクシー出発式から(2024年4月現在に至るまで)、SWAT Mobility Japanに伺った内容を掲載しています。
Q)TABITO Japan質問 A)SWAT Mobility Japan様回答

 

Q) SWAT Mobility Japan 株式会社 様の会社概要、日本国内でのMaaSアプリ導入事例など、ご紹介いただけますか?

A) SWAT Mobilityは、ASEANを中心に世界7ヶ国でサービスを提供するシンガポール発のモビリティスタートアップです。独自開発したルーティング・アルゴリズムを利用し、AIオンデマンド交通運行サービス、路線バスの乗降データや人流データを活用した交通分析、物流向けの配送ルート最適化サービスを提供しています。2020年に日本でのサービスを開始し、長野白馬村、東京三鷹市、大阪豊能町、大阪堺市、京都与謝野町での導入実績があります。

Q)白馬村で活用されている、アプリの特徴を教えてください。

A) SWATのアプリは6か国語(日本語、英語、中国語(簡体字)、タイ語、インドネシア語、ベトナム語)に対応しており、様々な国から訪れるインバウンド観光客が利用できます。また、独自のアルゴリズムに加えて、200以上のパラメーターを保有しており、サービスに応じてカスタマイズが可能です。2022年の運行では積雪が多くなっても運行に遅延が無いように走行スピードの調整や運行効率向上のための各種パラメーター調整を実施しました。その結果、高いサービス満足度(アンケート回答者の91%が星5つの最高評価、その中でも乗車時刻の正確性を最も評価)と運行効率(相乗り率73%)を記録しました。また、累計乗車人数は12000人に到達し、冬の観光の足として、白馬村の賑わいに大きく貢献いたしました。

    Q)MaaSアプリは、今後どのような展開が期待できるでしょうか。またSWAT Mobirity Japan様の日本国内の展開のビジョンなどはいかがでしょうか?(海外の事例やビジョンなどがあれば、そちらもご紹介ください。)

    A) 白馬村の事例であるレストラン予約との連携のように他サービスとの連携を促進していきたいと思います。移動には必ず目的があると思っており、目的となる消費行動と連携し、お客様にシームレスな移動体験をして頂きたいと考えています。

    移動の先にある目的を見据えてサービスを提供してこそ、SWAT Mobilityの能動的なMaaSの技術が活かされてくる、ということのようにも感じます。

    三鷹市と共に進む、地域交通の革新(オンデマンド交通)  ー白馬村以外の事例ー

    人口19万人、そのうち65歳以上が20%以上を占める三鷹市において、重要な課題であった、高齢者の活動性を支える移動手段の確保に、技術提供をしたSWAT Mobility Japan。
    特に細く急な坂道が多い住宅街では、自宅からバス停まで数百メートル歩く地域も少ないという。

    実証期間:2022年10月24日~2023年9月30日
    サービス提供エリア:三鷹市大沢地区・三鷹市役所・杏林大学病院・元気創造プラザ
    利用方法:アプリ「三鷹市 大沢AIデマンド」または電話予約
    運行事業者:タクシー会社2社(全2台体制)
    Webサイト:リンク(三鷹市ホームページ)

     

    Q)三鷹市のホワイトラベルアプリについては、高齢者や車いすの利用者に対応した内容のようですが、
    白馬村のアプリとの違いをいくつか挙げていただけますでしょうか。

    A)白馬村のアプリと三鷹市のアプリでは違いはありません。三鷹市のアプリは、住民の利用を想定しており、車椅子の方も利用できるように、アプリの設定をしております。
    白馬村のアプリは、白馬村アプリ「Hakub DO」から住民向け期間定額乗り放題プランを購入した人向けにアプリの表示を変更しています。

     

    三鷹市の事例紹介
    https://www.swatmobility.com/jp-case-studies/mitaka-20230616


     

    Q)目的に応じ、開発の内容は異なり、カスタマイズできるとのことですが、今後のニーズは、どの辺にありそうですか。

    A)移動はあくまで手段ですので、目的となる消費活動と連携したシームレスな移動体験を提供したいと考えております。白馬村のアプリを通じて、レストラン予約アプリであるTableCheck社との連携は一つの事例です。レストランの予約と移動の予約が一度にできれば、お客様の満足度は上がると思います。レストラン予約との連携以外にも、病院や塾など他サービスとの連携を進めていきたいと考えています。

     

    Q)最後にお伺いします。人流データは、SWAT様独自のデータ収集・解析をお手持ちでしょうか?

    A)弊社は人流データの収集自体は行っていませんが、取得した人流データの解析や分析は行っております。交通データや人流データ利用した分析サービスからソリューション提供(AIオンデマンド交通運行システムの提供)まで一気通貫でサービスを提供できます。

    分析サービスにおいては、路線バス等の乗降データや人流データをもとに、移動を可視化・分析し、公共交通計画の策定を支援します。また、オンデマンド交通運行アプリでは、コア技術となるアルゴリズムがシンガポールと日本で特許を取得しており、ルーティング・アルゴリズムを評価する世界的なベンチマークにおいても、世界記録を出した実績を持っています。この技術により、最小の車両台数で、より多くの乗客を相乗りさせながら、効率的なルートで送迎することが可能です。ルート計算の基盤にゼンリンの道路データを導入しており、日本の道路情報を考慮した精度の高いルーティングが可能です。また、API連携により、飲食店予約アプリなど他サービスとの連携が容易にできます。

     

    今回の記事作成にあたり、回答ご協力くださった SWAT Mobility Japan株式会社 山口 康平さん
    スノーピーク白馬ランドステーション ナイトデマンドタクシー出発式にて

     

     

    SWAT Mobility Japanへの期待

    SWAT Mobility Japanの技術は、今後もより一層、自治体はじめとし、様々な企業や組織において、需要が高まっていくことが予想されます。一例としては、大規模企業や中小企業が従業員の通勤やビジネス関連の移動を効率化や、配送サービスの分野において、独自のアルゴリズムを用いた、移動の効率化をより必要とする顧客への解決策を携えて、移動の先にある目的への最短ルートを導くという点において、実用的な結果が期待できます。
    自治体においては、交通問題や公共交通機関の改善を目指す役割を果たし、バスやタクシーなどの運行の効率化や利便性向上のためにSWAT Mobility Japanのサービスを導入することはもちろん、カーシェアリングやライドシェアリング企業など、モビリティサービスプロバイダーにあたる民間企業へ、SWAT Mobility Japanの技術を活用してサービスの品質や効率性を向上させることもできそうです。
    新たなパートナーシップや市場拡大はもちろん、競争が激しい分野の中で、SWAT Mobility Japan独自の、戦略的な展開にも今後注目が集まりそうです。

     

     

    参考情報

    2023 白馬ナイトデマンドタクシーのプレス
    https://www.swatmobility.com/jp-media/hakuba2023-1220

    白馬村住民交通のプレス
    https://www.swatmobility.com/jp-media/hakuba-public-transport

     

    SWAT Mobility Japan 株式会社
    東京都千代田区麹町6-6-2 番町麹町ビルディング5F WeWork麹町
    https://www.swatmobility.com/jp

     

    デジタルツイン(※)
    インターネットに接続(せつぞく)した機器などを活用して現実(げんじつ)空間の情報(じょうほう)を取得し、サイバー空間内に現実空間のかん境(きょう)を再現(さいげん)することを、デジタルツインと呼(よ)びます。
    デジタルツインは、2002年に米ミシガン大学のマイケル・グリーブスによって広く提唱(ていしょう)されたがい念(ねん)です。現実世界と対になるふたご(ツイン)をデジタル空間上に構築し、モニタリングやシミュレーションを可能(かのう)にする仕組みの事を言います。

    元の文に戻る


    MaaSとは
    Mobility as a Service の略で、交通渋滞の削減や、効率的な移動手段を提供し、スマートな移動プラットフォームや、交通の最適化ソリューションを展開し、通勤やビジネス、観光地の新たな移動ニーズに対応するのはもちろん、環境への負荷の軽減を実現するとされ、期待される次世代の移動サービスの技術です。

    元の文に戻る

    コメント



    タイトルとURLをコピーしました