異国情緒のマリアージュ ― 中村仁樹 コラムVol.4 ―

 

異国情緒のマリアージュ ― 中村仁樹 コラムVol.4 ―

カタールワールドカップを皮切りに、世界では大々的に観光が再開されつつあります。そんな中サウジアラビア「リヤド・シーズン 2022-ジャパンアニメタウン」に桜menで出演してきました

 

日本でいうところの表参道に、移動式のディズニーランドが現れたレベルの、圧倒的なクオリティーとインパクト、まさに国を挙げての大イベントです。(日本からはAimerさん藍井エイルさんも出演)道ゆく人のほとんどはノーマスク、PCR検査が可能な病院を探すのもひと苦労なほどの収束ぶりで、ため込んでいたエネルギーを解き放つかの如く、ステージと客席が一体化して盛り上がりました。

眺めれば砂漠。コーランで目覚め、フムスとチャイで一日がスタート

「マリアージュ」という言葉をご存じでしょうか。お酒と料理の持つ互いの味、色、香り、産地などが絶妙に重なり合いハーモニーを奏でることを言います。音楽においてもそれは例外ではなく、音楽が土地のソウルフード、お酒と見事に調和したとき「マリアージュ」が生まれます。想像してみてください、鮮やかな紅葉をたたえる庭園内の老舗懐石料理店に、あえて爆音のヘビーメタルがかかっていたらどういうことになるでしょうか。テンションが高まりすぎてしまい、しっとりと三味線や箏で奏でられる都節のほうがしっくりきそうです。世界中にご当地グルメがあるように、民族はそれぞれの音楽、音階を持っています。中東はアラビアン、スイスはヨーデル、インドネシアはガムラン、モンゴルはホーミー、南の島はハワイアン、古代フリギア王国、リディア王国の音階など、エキゾチックな趣のある音楽が古の楽器と共に伝承されています。

楽器のおこりは叩くか吹くか、遠くにいる人への原始的な通信手段の道具として用いられました。トーキング・ドラム、危険を知らせる半鐘、時刻を告げる鐘、家畜を追う角笛、軍隊を指揮するラッパ、などが挙げられますが、これだけで一つのバンドが編成できそうですね。伝える情報が多くなり複雑化するにつれ道具は楽器として発達し(驚くことに小鳥のように口笛で複雑な会話ができる地域が世界中に数多くあります)、時を経て祭祀的な要素、祈りや魔除けなどのおまじないとしての要素も持ち合わせるようになりました。やがてそれらの楽器が合奏を始めると、音楽としてリズム、ハーモニー、メロディーなどが体系化され、宮廷や庶民の間に広がりその国を代表する文化、芸術として発展を遂げていきます。

 

楽器が今のように発達する以前、人間はどのような感性をもっていたのでしょうか。南国と北国、海辺と山奥、食べるものも言葉も違えば考え方も全く異なってきますが、今よりずっとシンプルな音階、音数であるからこそ、たとえ人種が違ってもピュアに心を通じ合わせられていたような気がします。

サウジの砂漠は日本の海、モンゴルの草原

民族には代々伝えられてきた「うた」があり、その地域の古くからの言い伝えや神話、労働の辛さ、自然の脅威、恋愛、飢饉、戦争の哀しみなど、人間が繰り返す喜びや愚かさのストーリーを先祖から歌い継いできました。それを聴いてノスタルジックになったり郷土愛を覚えるのは、体という大きな無意識の塊が応えているからでしょうか。そもそも誰が残そうとしたのでもなく時代を超えてきた当時の流行の最先端の「うた」には、人の心の奥底に訴えかける大きなパワーがあるように思えます。

そんな太古の感性にアプローチできないかと「大自然」をテーマに、各国の「うた」やリズムを取り込み、無意識のレベルに響いてくる音色を追求し続けています。

 

日本モンゴル国交樹立50周年コンサート

草原が海扱いのモンゴルでは資本主義が導入されたのが1996年とまだ日が浅く、素朴な遊牧生活もまだまだ残っている印象でした。しかしコロナ過で一気に通信網が発達し、ゲル(移動式住居)の中でスマホを使うという生活に様変わりしました。(Uberは馬なのでしょうか)

ケニアのマサイ族も例外ではありません。マサイの青年はガードマンとして働くさなか「成人式の儀式でライオンを狩りに行くため、一か月休暇が欲しい」と、スマホで連絡をしてきたそうです。

今やそんな、国家も文化も人種も異なる感性同士が、当たり前のように国境を超えて会話をし始めています。

現代は旅する文化、各国お互いに良いところを取り込み合うグローバル化の時代です。文化圏がちがえばちがうほどその対比は熱を帯び、響きあうことでしょう。

恋しいのは湯船と和食

日本からサウジ、およそ24時間の移動からのリハーサル&一日4回のステージ、愛嬌たっぷりなドジっ子アラビアンたちに僕の自律神経は完全に破壊され、温泉にゆっくり浸かれる水の豊かな日本はなんて素晴らしいんだと、改めて思うことしきりでした。日本の当たり前のありがたさを痛感するとともに、ホスピタリティーを突き詰めるあまり、感性を閉じ込めすぎなのではないかと心配にもなります。

 

とはいえ旅の醍醐味は異国情緒とソウルフードに舌鼓。おうちで美味しいエスニック料理を作った際はぜひ、ご当地ソングをかけて盛り上げましょう。


 

CAMPFIREでのクラウドファンディング、ご支援いただき誠にありがとうございました!

皆様の温かいお気持ちに感謝の気持ちが溢れています。心を込めたリターンを引き続きお送りしていきます。無事にCD発売され、サブスクリプションでも視聴可能ですので、ぜひ一度お聴きください。

現在ストリーミングサービスで配信中 http://linkk.la/nr-hkcvK (上記サービス以外も配信中)

オフィシャルショップ https://masaki-nakamura.booth.pm/


 

Profile

中村仁樹 なかむら まさき
尺八演奏家・作詞作曲家
愛媛県宇和島市出身。宇和島アンバサダー。
所属ユニット:桜men、蓮-REN-、HANABI、斬月

17歳で尺八に出会い、その魅力に魅せられ、東京藝術大学音楽学部邦楽科尺八専攻に進む。
第六回尺八新人王決定戦、第三回東京邦楽コンクール、第二回和洋楽器グループコンテストで優勝を果たす。
読売新聞社賞、日本民謡協会賞受賞、宇和島大賞受賞。長谷検校記念くまもと全国邦楽コンクール優秀賞。長江杯優秀賞。
第14回ベストデビュタントオブザイヤー受賞。
尺八本来の響きを生かし、様々なジャンルを自在に行き来するスタイルは多くのファンを魅了してやまない。
大自然や自己の内なる世界を投影したオリジナル曲は高い評価を得ている。
これまでに10枚のアルバムを発表。30枚以上のアルバムに参加。 サントリーホール・両国国技館・アメリカ大使館・フランス大使館・アイルランド大使館などで招待演奏を行う。
藤原道山、上妻宏光、川井郁子、鳥羽一郎、坂本冬美、水谷千重子、嶋田彩綜、紫舟、ライムグリーンオーケストラ、ルビパ・ド・オーケストラ、とコラボレーション。
増上寺にて仏教成人大学講師を努める。
「しのぶ」ファッションモデル。
2016年初のsoloアルバム「祈り」を発売。NHKなどで放送される。 2017年avexより、崎山つばさwith桜menとして『月花夜』でメジャーデビュー。
2020年5月avexより桜men1stアルバム『華の大演舞会』リリース。

ホームページ 
https://www.masaki-nakamura.com/
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ブログ

2ndアルバム『願い』 (オフィシャルショップにジャンプ)

 

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