― 夢の中のファンファーレ ―  尺八演奏家・作詞作曲家 中村仁樹さんコラムvol.1

空前の10連休、ゴールデンウィークは何をして過ごしましたか?

どこかに旅行にいき羽をのばしたり、カフェでのんびり読書、いろんなことをインプットされたことでしょう。

色々なことがあった日は寝ている間も楽しい思い出がリフレインされて、時に「あっ」と驚くストーリーの主人公になり、朝まで大冒険の中にいたりします。

「夢」の中では興奮冷めやらぬ思い出、忘れられない感情が無意識的に集まって、どうにか消化しようとしているそうです。

作曲という作業はじつは限りなく「夢」に近いです。

作曲モードのスイッチを入れると、目の裏に映る光景が音楽に変換されてなだれ込んできます。

喜び楽しいと明るい、怒り哀しむと暗いメロディー、興奮しているとアップテンポの激しい、リラックスしていると穏やかなフレーズが脳内に浮かび、「これはいい!」というものだけ捕まえてきて、組み合わせていきます。

bloomdanceという桜をテーマとした曲を作ったときのことを例に挙げると、 桜のつぼみが一斉に芽吹いていく(0:00)→うつむくと小川に桜の花びらが漂っている(0:27)→見上げると満開の桜の大木が!(1:06) こうしてみると、名シーンだらけの脳内動画の編集のようですね。

作曲 中村仁樹 Bloom dance

ただ動画の編集と全く異なるのは、無の状態から音を連想ゲームのように思い浮かべて作っていくことです。

巨大恒星の最終物質ともいわれる金は黄昏と富と感動を、太陽の赤で森が緑に潤い、豊かさと平穏が想起されます。そよ風が吹くと安心安全で心地のよい、台風の激しい風が吹くと怖い悲しい恐ろしい、耳を塞ぎたくなるような音がしますね。

細長く柔らかい管をぐるぐる回すと風圧で「ドミソシ♪」と音が鳴ります(ぜひ一度お試し下さい)。

ドレミファソラシド、これは人類が発明したものではなく、自然に発生しているものなのです。

花の香を嗅ぐとセロトニンが出てリラックス、ミルクを思い浮かべるとドーパミンが出て涎が、抱擁をするとオキシトシンが出て幸福と安心感に包まれます。

誰かに教わったことでもないことなので、脊椎の奥にある太古の感覚なのでしょうか。

世界各地の民族には代々伝えられてきた「うた」があります。

その地域の古くからの言い伝えや神話、労働の辛さ、恋愛、飢饉、戦争の哀しみなど、人間が繰り返す喜びや愚かさのストーリーを先祖から歌い継いできました。

それを聴いてノスタルジックになったり郷土愛を覚えるのは、体という大きな無意識の塊が応えているからでしょうか。そもそも誰が残そうとしたのでもなく時代を超えてきた当時の流行の最先端の「うた」には、人の心の奥底に訴えかける大きなパワーがあるように思えます。

まさに「訴えかける」が「うた」の語源と言われていますが、名曲にかかるとどんなことでも、相手に響いてしまうのが不思議です。かつて演奏で訪れたテロ直後のケニアのナイロビ空港の厳重な税関がなかなか通過できず、尺八を吹いて突破したことが懐かしく思い出されます。

マシンガンに撃たれハチの巣化した車がレッカーされているような情勢下、「その太鼓をあけて、中身を見せなさい」(職員さん)「?楽器だから無理です!」(和太鼓奏者壱太郎さん)押し問答が続く中、ふいに尺八の国家独奏を聴いた、岩のように固い職員さんの表情がみるみるほどけていった瞬間は今でも忘れられません。

とても有名な賛美歌『Amazing Grace』と日本の民謡『ソーラン節』は同じ、シンプルかつ原始的な五音音階(民謡音階)から成り、日本古謡の『ほたるこい』などもそれで出来ています。

オマージュした『花の咲く頃』(地元宇和島市辰野川のホタル、遊子の段々畑の花の咲く頃の期待感、大気の様子や大地の香りを包むように書いた曲)を聴いた海外の方は「子供時代の里山にタイムスリップしたような感覚になった」と、ある方は「全く理由がわからないけれども、ただただ懐かしい気持ちが奥底から溢れるように号泣していた」と。

楽器が今のように発達する以前、人間はどのような感性をもっていたのでしょうか。

南国と北国、海辺と山奥、食べるものも言葉も違えば考え方も全く異なってきますが、今よりずっとシンプルな音階、音数であるからこそ、たとえ人種が違ってもピュアに心を通じ合わせられていたような気がします。

誰でも聴いたことがあり、誰かが残そうとするわけでもなく歌い継がれてきたアンセム(名曲の意も含む)とその効果は、信じられないほど凄いことなのだと改めて思います。

世界を見わたすと不穏なニュースが続いています。不安になってしまった時は朝、昼、晩、耳に幸せを運ぶお気に入りの音楽のローテーションを組んで、心の中を晴れやかにしてあげましょう。

作曲 中村仁樹 花の咲く頃

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プロフィール 中村仁樹(なかむら まさき)

尺八演奏家・作詞作曲家
愛媛県宇和島市出身。宇和島アンバサダー。
所属ユニット:桜men、蓮-REN-、HANABI、斬月

17歳で尺八に出会い、その魅力に魅せられ、東京藝術大学音楽学部邦楽科尺八専攻に進む。
第六回尺八新人王決定戦、第三回東京邦楽コンクール、第二回和洋楽器グループコンテストで優勝を果たす。
読売新聞社賞、日本民謡協会賞受賞、宇和島大賞受賞。長谷検校記念くまもと全国邦楽コンクール優秀賞。長江杯優秀賞。
第14回ベストデビュタントオブザイヤー受賞。
尺八本来の響きを生かし、様々なジャンルを自在に行き来するスタイルは多くのファンを魅了してやまない。
大自然や自己の内なる世界を投影したオリジナル曲は高い評価を得ている。
これまでに10枚のアルバムを発表。30枚以上のアルバムに参加。 サントリーホール・両国国技館・アメリカ大使館・フランス大使館・アイルランド大使館などで招待演奏を行う。
藤原道山、上妻宏光、川井郁子、鳥羽一郎、坂本冬美、水谷千重子、嶋田彩綜、紫舟、ライムグリーンオーケストラ、ルビパ・ド・オーケストラ、とコラボレーション。
増上寺にて仏教成人大学講師を努める。
「しのぶ」ファッションモデル。
2016年初のsoloアルバム「祈り」を発売。NHKなどで放送される。 2017年avexより、崎山つばさwith桜menとして『月花夜』でメジャーデビュー。
2020年5月avexより桜men1stアルバム『華の大演舞会』リリース。


中村仁樹さん出演情報

【playground Cafe Box プレミアムライブ】

playground Cafe Boxプレミアムライブ 和太鼓奏者壱太郎ライブ「玉響」

開催日:7月30日(土)

時間:18:00開場 18:30開演

会場:playground Cafe Box  山形市七日町3ー5ー18工藤ビル1F

一般入場料:2,500円 

学生入場料:1,800円

※1ドリンク付き 完全予約制 限定30名様 全席自由

Focus(フォーカス) TEL080-9010-1080 工藤

TABITO アート・イベント情報でも、ご確認いただけます。☟

playground Cafe Boxプレミアムライブ 和太鼓奏者壱太郎ライブ「玉響」2022.7.30 開催! | TABITO Japan

【モガミ住研presents 和太鼓奏者 壱太郎コンサート「流転」】

» ページが見つかりませんでした

2022年07月31日(日)

時間 16:30

会場 東ソーアリーナ(http://www.gen.or.jp/

料金 一般前売り3,500円(当日 4,000円)/ 高校生以下2,000円(前売り当日共)

・消費税込み
・未就学児の入場不可

チケット販売所


中村仁樹さん、次回コラム(vol.2)は、8月15日公開を予定しています。(全6回)

TABITO アーティストインタビューは下記リンクよりご確認いただけます☟

『― えもいわれぬものを包み込む、大気のような音楽。今この一音に想いを込めて ― 尺八演奏家・作詞作曲家 中村仁樹さんインタビュー』尺八演奏家・作曲家 中村仁樹 | TABITO Japan

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