リモートワークが増え、せっかくだからおうち時間を有効に使おう!と習い事を始められた方も多いことと思います。
僕もレッスンの際に生徒さんに色々なことを聞かれますが、その中でも多いのが「大勢の前で演奏をすることに、緊張しませんか?」という質問です。
寝ていてもばっちり吹ける!と自信をもてるぐらい練習をしていても、いざ本番となるといろんな期待や不安で気負ってしまい緊張するものです。
もともと緊張しやすい僕は、本番前にアガってしまうことが多々ありました。
すぐに息があがりフレーズが途中で切れ、さらには汗をびっしょりかいて楽器が滑ったりと、日ごろの練習の成果をまるで発揮できず悔しい思いをしていました。
スポーツの世界では優れた記録を出すために「ゾーン」に入ると言う言葉がよく使われます。
集中力が物凄く高まり、感覚が研ぎ澄まされ時があっという間に過ぎ、目の前のことだけに疲れ知らずのにのめりこんだ経験はありませんか?意外と誰でも経験したことのある気持ちのいい状態のことを「ゾーン」と呼ぶようです。
そこで今回は「ゾーン」に入るために長年かけて研究し考案した、僕なりの演奏前の「ルーティン(習慣)」をご紹介したいと思います。
最も重要なこととして、そもそも尺八は吹く楽器なので、とにかくリラックスし、呼吸を深く深くしていく必要があります。
本番前、緊張してしまうと胃が痛くなったりと、消化器系の不調が起こります。
そうすると周辺にある横隔膜や肺の動きも悪くなるので、まずは
①肺周りのストレッチと、お腹を優しくマッサージ をします。お腹がふわふわになったなら衣装に着替え、
②操り人形が天井から糸で吊るされるように「すっ」と無重力状態で立ち上がり、肩の力を抜き、焦点うつろに「ぼーっ」 とします。間違えたらどうしよう、大丈夫かなと、あれこれ頭に浮かんできますが、悩んでいると息が浅くなるので、
嘘でもいいから ③「不安や心配事が一切ない」 と思い込みます。
さらに有名な ④「人」を三回掌に書いてそれを飲む こうすることであくびをして、顔の骨格をほぐします。 自然に深呼吸を繰り返して、血中酸素濃度を高め、息に余裕を持たせていきます。
いよいよ演奏直前の舞台裏では、 ⑤いいにおいを嗅ぐように笑顔で眉間を緩めて、胸と丹田を掌で叩く こうすることで脳波がいわゆるリラックスの脳波、α波からキリっとしたα波に切り替わります。
したらば ⑥楽器を構えて見つめ、自分は楽器で、楽器は自分だと思う 楽器がものを考えるわけがないし、自分は楽器なので余計なことは考えないという具合に。
そうすることで、音楽にユニゾンしていきやすくなります。
慣れればなんにでも応用できると思います、例えばノートパソコンに成りきるでも良いかもしれませんね(笑) さらにこれがとても大事なのですが、
⑦開演前と終演後のお客さんの笑顔をイメージして、なおかつ自分の過去最高だった時のことを思い返します。
僕の場合は東京JAZZフェスティバル、素晴らしいアーティストに囲まれて、自分のソロでお客さんに興奮の渦の波が発生していてまさに最高の瞬間!というふうに具体的に思い出すと良いようです。
Paul Grabowsky Quartet – Tokyo Jazz Festival – Plaza 2016 – YouTube
やってみるとわかると思うのですが、①~⑦どれか一つでも深呼吸ができます。
7個も同時に行えば、舞台の方がむしろ普段よりもリラックスできそうですね。
プレゼンの直前などに行えば効果は抜群。
お仕事中の1分休憩でもできますし、就寝前に行うとぐっすりと寝られます。
呼吸を制するものは人生を制するという風にも言われますが、皆さんもぜひこの「ルーティン」試してみてください。
そしてこれはそのまま尺八で「いい音」を出すための極意でもあるわけですが、「いい音」とはなにを指すのでしょうか。
古今東西、朗々として響く音が基準になっていることが多いのですが、日本の古典音楽では「さわり」の音という、いい意味でのエグ味成分をもった音が重要になってきます。
しっとり深みのあるハスキーボイスに近いでしょうか。
酸いも甘いもいろんな人生を経たことを感じさせる声、地歌・民謡・演歌・謡曲にもよく聴かれます。天下の名器ストラディバリウスも、経年による枯れ、粘りと歪みのある音色が魅力とされます。
逆に当たり障りのない完璧な音はどうでしょう?それはそれで魅力的ですし、それがあってこそ個性が際立つと思います。
想像するに、楽器すべてが我こそはと好き放題主張しているオーケストラは学級崩壊しかねません。
小学生の頃、やんちゃな子、にぎやかな子、おとなしい子、お勉強が得意な子がバランスよくいるクラスは、意外とまとまりがよくて楽しかった思い出があります。
リズム、和音、ハーモニー、メロディーが調和を取りつつ、絶妙なアップダウンがあるからこそ名曲は聴く人を引き付け、人生を変える力を持ちます。
本来「さわりだけ」というのは、曲中で一番インパクトのある「サビ」の部分を聴かせることを指します。
「わびさび」という美意識は、きらびやかなものがエイジング、経年劣化され、にじみ出た本質、さびの渋み、秘した花が心の琴線に触れることをいいます。
墨の濃淡で表現する水墨画にもその感性は現れますが、それは尺八の世界観とほぼ一致します。
モノトーンの中に薄いようで濃い墨、近いようで遠い対象、シンプルな空間だからこそ物理の法則がカオスになり感覚がバグを起こし、想像力がかき立てられ、亜空間めいた世界が脳内に出現するようです。
尺八は江戸時代、虚無僧という禅僧が「一音成仏」を本懐とし、尺八でお経(本曲)を吹いていた法器です。
自らの息を音で感じ、客観的に精神を統一することができるので、弘法大師の阿字観に通ずるところもあります。
僕もいつか一音で全てを頷けてしまえような「さわり」の音を出すことができればと夢見ています。
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生活の中に素敵なルーティンを作って、幸せの総量を増やしていきましょう。
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YAMAHAミュージックアベニュー渋谷公園通り 中村 仁樹さん尺八レッスン下記をご確認ください。
中村仁樹さんプロフィール
中村仁樹 なかむら まさき
尺八演奏家・作詞作曲家
愛媛県宇和島市出身。宇和島アンバサダー。
所属ユニット:桜men、蓮-REN-、HANABI、斬月
17歳で尺八に出会い、その魅力に魅せられ、東京藝術大学音楽学部邦楽科尺八専攻に進む。
第六回尺八新人王決定戦、第三回東京邦楽コンクール、第二回和洋楽器グループコンテストで優勝を果たす。
読売新聞社賞、日本民謡協会賞受賞、宇和島大賞受賞。長谷検校記念くまもと全国邦楽コンクール優秀賞。長江杯優秀賞。
第14回ベストデビュタントオブザイヤー受賞。
尺八本来の響きを生かし、様々なジャンルを自在に行き来するスタイルは多くのファンを魅了してやまない。
大自然や自己の内なる世界を投影したオリジナル曲は高い評価を得ている。
これまでに10枚のアルバムを発表。30枚以上のアルバムに参加。 サントリーホール・両国国技館・アメリカ大使館・フランス大使館・アイルランド大使館などで招待演奏を行う。
藤原道山、上妻宏光、川井郁子、鳥羽一郎、坂本冬美、水谷千重子、嶋田彩綜、紫舟、ライムグリーンオーケストラ、ルビパ・ド・オーケストラ、とコラボレーション。
増上寺にて仏教成人大学講師を努める。
「しのぶ」ファッションモデル。
2016年初のsoloアルバム「祈り」を発売。NHKなどで放送される。 2017年avexより、崎山つばさwith桜menとして『月花夜』でメジャーデビュー。
2020年5月avexより桜men1stアルバム『華の大演舞会』リリース。
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